コラム
“カスハラ”はメンタルだけでなく安全衛生の課題

7月は、暑さによる疲労や繁忙期の混雑が重なり、クレーム対応の難度が一気に上がる季節です。ここ数年、顧客対応の現場では「理不尽な要求」「長時間拘束」「威圧・暴言」などが常態化し、対応する側の疲弊が見えにくい形で積み上がっています。いわゆる“カスハラ”は、個人の我慢で解決できる問題ではなく、組織の安全配慮として設計し直す段階に来ています。
制度面でも動きがあります。令和7年(2025年)には、カスタマーハラスメント等への対応を含む職場のハラスメント対策強化のため、労働施策総合推進法等が改正され、公布から1年6か月以内の施行予定(一部は令和8年4月1日施行予定)と整理されています。
さらに実態としても、令和5年度の「職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間に相談があった企業割合が**「顧客等からの著しい迷惑行為」27.9%(令和2年度比+8.4ポイント)**と示され、現場の負荷が増していることが見て取れます。
では、企業が今から何を整えると“効く”のか。鍵は、カスハラを「現場の腕力」ではなくルールと導線で処理できるようにすることです。政府広報オンラインでも、法改正とあわせて対策の方向性が整理されています。
現場が折れないための、実装ポイント
1)まず“線引き”を言語化する(正当な苦情と迷惑行為を分ける)
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「何がOKで、何がアウトか」を定義する(暴言・脅迫・身体接触・土下座要求・過度な拘束など)
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受付基準を“担当者の性格”に依存させない
線引きが曖昧だと、強い相手ほど得をし、現場だけが削られます。
2)対応フローを段階化する(エスカレーション設計)
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一次対応(事実確認・要点整理)→ 二次対応(上長/責任者)→ 三次対応(本部・顧問・警察等)
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「ここを超えたら対応終了」「ここから先は録音・複数名対応」など、明確な境界を作る
理想は、現場が“逃げる勇気”を持つのではなく、逃げてよい仕組みが最初からあることです。
3)記録は“武器”ではなく“防具”として統一する
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日時、場所、相手、発言、要求内容、対応、同席者、次アクション
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テンプレを一本化し、誰が書いても同じ粒度になるようにする
記録があると、組織としての判断(対応継続/終了、出禁、法的対応、職員ケア)が速くなります。
4)対応者のケアをフローに組み込む(事後対応までが対策)
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対応直後の短い振り返り(デブリーフ)
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必要なら配置配慮、一時的な業務調整、産業保健スタッフへの相談導線
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「相談したら面倒になる」を消す(相談窓口の運用設計が肝)
5)“顧客向けメッセージ”を用意しておく
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受付・電話口・掲示での基本方針(暴言・威圧への対応方針)
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伝え方を統一しておくと、現場の心理的負担が下がります
7月は、暑さと繁忙で人も組織も余裕を失いやすい時期です。だからこそ「現場のがんばり」に依存しない形で、線引き・対応フロー・記録・ケアを整えることが、結果的に顧客対応の質も守ります。自社の業種・窓口導線に合わせたマニュアル整備、研修設計、相談体制の作り込みなど、産業医事務所として運用まで伴走可能です。