コラム
梅雨の“蒸し暑さ”は熱中症の前哨戦

梅雨どきの暑さは、真夏のような強い日差しがなくても油断できません。湿度が上がると汗が蒸発しにくくなり、体温が下がらずに“じわじわ”と熱がこもります。現場では「気温はそこまで高くないのに、やたらしんどい」「雨具や防護服で体が冷えない」-そんな感覚が出たら、すでに危険域に近づいているサインです。
実際、職場の熱中症は軽症で済むとは限りません。厚生労働省の公表では、令和6年(2024年)の職場における熱中症(死亡・休業4日以上)は1,257人で統計開始(2005年)以降最多、死亡者は31人でした。発生は建設業・製造業で約4割を占め、死亡災害の事例では「重篤化してから発見」「医療機関に搬送しない」など、初期対応の遅れが繰り返し指摘されています。
では、6月に何を整えるべきか。ポイントは「対策を“やっているつもり”で終わらせず、運用として回る形に落とす」ことです。近年は熱中症対策の考え方が制度面でも整理され、労働安全衛生規則(第612条の2)に基づき、①早期発見の体制、②重篤化防止の手順、③関係者への周知が求められる枠組みが示されています。さらに令和8年2月には、職場の熱中症防止のためのガイドライン作成に向けた検討会資料も公開されており、対策の“標準化”が進んでいる流れが読み取れます。
6月のうちに「最低限ここまで」を完成させる
1)WBGTを“測る”だけでなく、“見える化”して判断に使う
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測定場所・頻度・掲示場所を決め、現場全員が同じ数字を見られる状態にする
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「この値なら休憩を○分」「この値なら作業を中止」まで、判断をルール化する(属人化しない)
2)体調不良の拾い上げを“遠慮ゼロ”にする
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朝礼での一言確認、巡視時の声かけ、単独作業の見直し
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「申告した人が損をしない」運用(配置変更・休憩が評価を下げない)を明文化する
梅雨は睡眠の質が落ちやすく、下痢や食欲低下など軽い体調不良が増えます。熱中症は“当日の暑さ”だけでなく“当日のコンディション”に強く左右されるため、ここが効きます。
3)初動フローを紙1枚にして、誰でも動ける状態へ
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離脱 → 冷却(首・腋窩・鼠径など)→ 飲水可否の判断 → 救急要請/受診判断
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「誰が」「何を」「どこへ連絡するか」まで書く(現場→上長→救急→家族など)
重篤例は“迷っている時間”で悪化します。判断に迷う状況こそ、フローの価値が出ます。
4)“暑熱順化”を前提に工程を組む
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新人、復職者、配置転換者は短時間から段階的に延長
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雨具・防護服など高負荷装備の工程は、特に休憩設計を厚めにする
6月は「ピーク対応」ではなく「仕組みづくり」の月です。7〜8月に入ってから慌てて整備すると、どうしても現場は回りません。職場の作業内容・導線に合わせたWBGT運用、教育(新人・管理職向け)、初動フローの整備など、必要に応じて産業医として実装までご支援します。