コラム
健康診断で異常を指摘されたとき(6)腎機能障害
はじめに
今回は、健康診断や人間ドックにおける腎機能検査の意義と、その結果から疑われる疾患についてお話しします。
腎臓は、そらまめのような形をした 10cm 程度の大きさの臓器で、腰のあたりに左右1つずつ存在します。腎臓は、体内の老廃物を排出したり、血液中の水分や電解質のバランスを維持したりする重要な役割を果たしています。健康診断や人間ドックにおける腎臓機能検査は、腎臓がこれらの機能を適切に果たしているかどうかを評価するためのものです。
腎臓の生理学的機能
腎臓は、体内の無駄な水分や老廃物を排泄することで主に役割を果たしています。また、ナトリウムなどのイオンの調節、酸性・アルカリ性のバランスの調整、赤血球産生の調整など、多岐にわたる機能を担っています。
- 体内の老廃物の排泄
- 体内の水分調節
- 電解質や酸アルカリのバランスの維持
- 赤血球の産生を助けるホルモンの分泌
- 血圧の調節
- カルシウムやビタミンD3など、骨の代謝に関連した物質の活性化
健康診断・人間ドックにおける検査
健康診断や人間ドックでは、血液検査と尿検査を通じて腎臓関連の検査を行います。これにより、現在の腎機能に問題がないか、将来的に腎臓機能を低下させるような病気が潜んでいないかを見極めることが可能です。
- 血液検査
1.血清クレアチニン
クレアチニンは筋肉組織から産生される老廃物であり、腎臓によって体内から排泄されます。腎臓の機能が低下すると、クレアチニンの尿中排泄量が減少し、それに伴って血中クレアチニン濃度が上昇します。この濃度の上昇を通じて、腎臓の機能を評価します。
2.eGFR(推定糸球体ろ過量)
eGFRは、腎臓の濾過機能を直接示す指標です。通常、直接的なGFRの測定は手間と時間がかかるため、血清クレアチニン濃度や年齢、性別などの情報からeGFRが推定されます。正常な腎臓機能を持つ場合、eGFRは通常90〜100程度です。
3.尿素窒素
尿素窒素もまた老廃物の一種であり、腎臓から尿に排泄されます。腎臓機能が低下すると、血液中の尿素窒素濃度が上昇します。ただし、この値は食事内容などにも影響されるため、腎臓機能だけでなく食生活の健康状態も考慮する必要があります。 - 尿検査
1.尿蛋白
通常、尿にはほとんどタンパク質が排泄されません。したがって、健診や人間ドックで尿中にタンパク質が検出される場合、腎臓に何らかの問題がある可能性があります。ただし、一時的な状況下(例:激しい運動や発熱など)では、通常尿中タンパク質が増加することもあります。
2.尿潜血
尿潜血検査は、肉眼では見えない程度の血液を尿中で検出します。腎臓や尿路のどこかで出血が起こっている場合、尿中に血液が混ざるため、尿潜血が陽性となります。
医療機関受診後の検査
「要精密検査」と評価された際には、通常、医療機関で再び血液検査や尿検査が実施されます。再検査において異常が確認されない場合、一時的な状態である可能性が高く、経過観察が主な対応となることが一般的です。再検査でも同様の異常が見られる場合、より詳細な精密検査が行われることになります。
尿検査で異常が見られた場合、慢性糸球体腎炎やネフローゼ症候群などの腎臓病の可能性が考えられます。正確な診断を行うためには腎生検が必要であり、通常は数日間の入院が必要です。また、血液検査で腎臓機能の低下が疑われる場合も、その原因を特定するために腎生検が検討されることがあります。ただし、病気が進行しすぎている場合には、腎生検が行えないことがあります。この場合、原因を特定できないため、根本的な治療ではなく病気の進行を遅らせる治療が行われることになります。
慢性腎臓病の診断と治療
まずは、腎臓の機能低下の原因を究明します。原因が特定されれば、それに対する治療によって改善する可能性があります。また、その後の腎臓の機能低下を緩和することも可能です。以前の検査結果があれば、それを参照して腎臓の機能低下が始まった時期や進行速度、尿の異常の有無などを確認します。ただし、健康診断項目にクレアチニンが含まれていない場合、経過が不明なこともあります。
次に、血液検査、尿検査、画像検査などを行い、さらに原因を探求します。一般的な原因としては、糖尿病、高血圧、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群などが挙げられますが、原因が特定できないこともあります。腎臓の機能低下は生まれつきのものや、幼少期に発症した特殊な病気による場合もあります。重要なのは、特殊な治療が存在する疾患を見逃さないことです。特殊な治療がない場合や、特殊な治療を受けても腎機能低下が残る場合には、腎臓を保護する治療が必要になります。
まとめ
腎臓病は進行するまで、しばしば症状が現れないため、健康診断を受けなければ早期発見は難しいです。もし健康診断で腎機能の低下などが指摘されたら、迅速に医療機関を受診し、できれば専門の腎臓内科を受診しましょう。
さらに、腎臓病は一度進行すると、治癒が難しくなるばかりか、腎臓機能の悪化を防ぐことも難しくなります。特に、特殊な治療が必要な疾患や原因を見逃さないようにすることが重要です。高血圧などの生活習慣病を既に患っている方はもちろんですが、特に健康な方も定期的に健康診断を受けるようにしましょう。