コラム
「休憩所」ではなく「休養所」がありますか?
最近はオフィスでも、職員食堂などの横に座敷のような横になれるスペースを設けている事業所が、多く見られるようになってきました。
普段は従業員の方が、お昼休みに仮眠を取る際などに使われていることが多いですが、実はこの場所は、オフィスなどでよく見掛ける椅子やテーブルが並んでいる「休憩所」とは似て非なる場所で、「休養所」と呼ばれる大切な場所なのです。
「休養所」は、職場で従業員が急な体調不良を起こした際に、救急車が来るまでの間臥床させて待機することを想定した場所のことで、労働安全衛生法が定める労働安全衛生規則において、「事業者は、常時五十人以上又は常時女性三十人以上の労働者を使用するときは、労働者が臥床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない」と規定されています。
これに対して「休憩所」は、「事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならない」と規定されています。
このように「休養所」は、勤務中に急な体調不良を起こした従業員に、適切な対応を取るためのスペースであり、リラックススペースとしての「休憩所」とは、本来目的や用途の異なる場所です。
また労働安全衛生規則において、「休憩室」は「設けるように努めなければならない」という努力義務であるのに対して、「休養室」は「設けなければならない」という明確な義務であり、従業員数が要件に達しているにも関わらず「休養室」を設置していなかった場合、有事の際には規則違反として義務を怠った企業の責任を問われる事態にもなりかねません。
職場巡視をさせていただいていると、何らかの形で「休憩所」はほとんどの事業所で設置されていますが、緊急時に従業員が臥床できるような「休養所」は設置されていない事業所も多く見られます。
今すぐには事務所スペースの問題で設置が難しいオフィスでも、簡易的に間仕切りを設けて、男性用と女性用に区別して簡易ベッドなどを設置しておくことをお勧めしています。
衛生管理者の方や事業主の方は、ご不明な点があれば産業医に一度ご相談をお願いいたします。