コラム
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健康診断で異常を指摘されたとき(5)肝機能障害
肝機能障害とは
肝機能障害は、肝臓の正常な機能が低下または損傷している状態を指します。
肝臓は、たんぱく質の合成、糖新生、解毒、脂肪代謝など、体内で多くの重要な役割を果たしています。
肝機能障害が進行すると、これらの重要な機能が影響を受け、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
肝機能障害を示す血液検査項目
血液検査では、肝機能を評価するためにいくつかの項目が測定されますが、主な肝機能の指標とその異常値について以下のような項目があります。
- AST(アスパルト酸アミノトランスフェラーゼ)
正常値:10~40 IU/L
ASTは、肝臓だけでなく、心臓や筋肉にも存在する酵素です。
肝細胞の損傷や炎症がある場合にASTの値が上昇します。 - ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)
正常値:5~40 IU/L
ALTも肝臓に多く存在する酵素で、肝細胞の損傷があると血液中に漏れ出し、ALTの値が上昇します。ASTとALTは特に肝機能障害の早期発見に用いられる重要な指標です。 - ALP(アルカリフォスファターゼ)
正常値:30~120 IU/L
ALPは肝臓や骨、腸管などで産生される酵素です。肝胆道系に障害がある場合や骨疾患などでも値が上昇することがあります。 - γ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)
正常値:10~40 IU/L
γ-GTPも肝胆道系に関連する酵素で、肝臓や胆道に障害がある場合に上昇します。γ-GPTの値が他の肝機能指標よりも早期に上昇することがあります。 - 肝特異的アミノ酸(アルブミン、総ビリルビン、直接ビリルビン)
アルブミン正常値:3.4~5.4 g/dL
総ビリルビン正常値:0.1~1.2 mg/dL
直接ビリルビン正常値:0.1~0.4 mg/dL
これらの項目は肝臓の機能や胆汁の排出に関連しています。
肝機能障害の場合、アルブミンの値が低下し、ビリルビンの値が上昇することがあります。
肝機能障害の症状
肝機能障害の症状は、原因や進行度合いによってさまざまですが、一般的な症状には以下のようなものがあります。
- 疲労感:肝機能障害の初期段階では、特に疲労感やだるさを感じることがあります。
- 食欲不振:食欲が減退し、体重減少することがあります。
- 腹部の不快感:腹部の膨満感、重さ、不快感、腹痛が現れることがあります。
- 黄疸:肝臓がビリルビンを処理できない場合に、皮膚や白目の部分が黄色く変色することがあります。
- 尿や便の変化:尿が濃い色になり、便が脂っぽくなることがあります。
- 脚のむくみ:肝機能障害が進行すると、体液のバランスが崩れて脚のむくみが起こることがあります。
- 出血傾向:肝臓は血液凝固に関与するたんぱく質を合成しますが、肝機能障害によって出血傾向が高まることがあります。
肝機能障害の原因
肝機能障害の原因は多岐にわたり、長期的なアルコールの摂取などによる脂肪肝、ウイルス感染(B型肝炎やC型肝炎)、薬物や化学物質の摂取、自己免疫疾患などが考えられます。
- 脂肪肝:過度のアルコール摂取や肥満などの要因により、肝臓に脂肪が蓄積することで肝機能障害が起こる場合があります。
- ウイルス感染:B型肝炎、C型肝炎などのウイルス感染が肝機能障害の原因になることがあります。
- 薬物や化学物質:一部の薬物や有害な化学物質によって肝臓が損傷を受ける場合があります。
- 自己免疫疾患:肝臓自体に攻撃する自己免疫疾患が肝機能障害を引き起こすことがあります。
肝機能障害の対策法
肝機能障害の対策法は、原因に応じて異なりますが、以下は一般的な対策法の一部です。
- アルコール制限:アルコールの摂取を控えるか避けることが、脂肪肝やアルコール性肝炎の場合に重要です。
- 薬物の管理:処方薬や市販薬を使用する際は、必ず医師や薬剤師に相談し、肝臓に負担をかけないように注意しましょう。
- ウイルス感染対策:B型肝炎やC型肝炎などのウイルス感染が原因の場合は、適切な治療や予防対策を行います。
食事で気をつけること
肝機能障害の場合、食事にも注意が必要です。最適な対策法や食事の内容は個人の状況や肝機能障害の原因によって異なりますが、以下は一般的な食事で注意することの一部です。
- 脂肪制限:特に脂肪分の多い食品や揚げ物を控えることが重要です。
- 塩分制限:高塩分の食品を減らし、塩分の摂りすぎに注意しましょう。
- 質の良いタンパク質:魚、豆類、低脂肪の肉など、質の良いタンパク質を摂取することが重要です。
- 野菜と果物:ビタミンやミネラルを豊富に含む野菜と果物を摂取し、食物繊維を意識して取り入れましょう。
まとめ
肝臓は体内で多くの重要な役割を果たしており、肝機能障害が進行すると健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
肝機能障害を早期発見することにより、早期治療の可能性、進行防止、合併症の予防、また疾病予防とライフスタイル改善につながることがあります。
健康診断や定期的な健康チェックを受けることで、肝機能障害を早期に発見できた場合は、検査結果を聞くだけで終わらずに、適切な対策を講じることが大切です。
また肝機能障害の症状を感じた場合にも、早めに医師の診察を受けることが重要です。