コラム
健康診断で異常を指摘されたとき(3)コレステロール・中性脂肪
「健康診断で異常を指摘されたとき」第3回は、脂質異常症について、生活習慣の改善ポイントや、見落としてはいけない家族性高コレステロール血症についてお話をさせていただきます。
コレステロール・中性脂肪とは
血液中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪などの脂肪が多くなった状態や、HDL(善玉)コレステロールが少なくなった状態を脂質異常症と言います。
・脂質異常症の診断基準(空腹時の血液検査で一項目でも当てはまると診断)
① LDL(悪玉)コレステロール | 140 mg/dL 以上 |
② HDL(善玉)コレステロール | 40 mg/dL 未満 |
③ 中性脂肪(トリグリセライド) | 150 mg/dL 以上 |
④ Non HDLコレステロール (総コレステロールーHDLコレステロール) |
170 mg/dL 以上 |
コレステロールは細胞膜や各種ホルモン、胆汁酸などの原料になる脂質の一種で、体を維持するために欠かせない物質です。
色々な役割のコレステロールが存在しますが、主に注目されるのは、肝臓で生成されたコレステロールを全身に運ぶ LDL(悪玉)コレステロールと、全身のコレステロールを肝臓に戻す HDL(善玉)コレステロールです。
体内のコレステロールは多すぎても少なすぎても問題があるため、適切な値を保つことが重要ですが、一般的には高値の場合に問題になることがほとんどです。
LDLコレステロールが増えすぎると血管内に入り込み、動脈硬化を促進することが知られており、これをLDLコレステロールの超悪玉化と言います。
中性脂肪は生命維持のための重要なエネルギーですが、糖分や脂肪、アルコールの過剰摂取や、運動不足により、内臓脂肪に必要以上に蓄積されてしまうと、肥満や動脈硬化に繋がります。
中性脂肪が増えすぎてしまうと、HDLコレステロールが減ってしまったり、LDLコレステロールが小型化して、血管壁に入り込み、動脈硬化を起こす原因となります。
この脂質異常症により動脈硬化が引き起こされた結果、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や、脳梗塞などに罹患する可能性が高くなります。
脂質異常症予防のための食生活
① 飽和脂肪酸や糖質を控えて、不飽和脂肪酸や食物繊維を多く摂取しましょう
- 肉より魚を多く食べる
魚にはHDLコレステロールを増加させる不飽和脂肪酸(DHA:ドコサヘキサエン酸 や EPA:エイコサペンタエン酸)が多く含まれており、中性脂肪を減らして、血圧を下げる効果があります。
一方で肉やラード、バター、乳脂肪分などには、中性脂肪やLDLコレステロールを増加させる飽和脂肪酸が多く含まれているので、過剰に摂取しないようにしましょう。 例:イワシ、サンマ、サバ、アジなどの青魚 - 食物繊維を積極的に摂る
小腸でのコレステロールの吸収を抑えたり、食べ過ぎを防いでくれるので、意識して摂取するようにしましょう。 例:ごぼう、にんじん、玉ねぎ、じゃがいも、さつまいもなどの野菜類
わかめ、ひじきなどの海藻類
おから、納豆などの大豆製品 - 抗酸化物質を含む食品を摂取する
ビタミンC、βカロテン、リコピン、ポリフェノールなどの抗酸化物質を多く含む食品を摂取することで、LDLコレステロールの超悪玉化を予防します。 例:緑黄色野菜、トマト、ナス、鮭、海老、緑茶 - 調理の際には食物性油を使用する
飽和脂肪酸を多く含むバターなどの動物性の脂よりも、不飽和脂肪酸を多く含む植物性油を使用しましょう。 例:オリーブ油、なたね油、しそ油 - 卵の食べ過ぎに注意する
卵を摂取することで、すぐにコレステロール値が上昇するわけではありませんが、コレステロール値が高い方は卵を食べすぎないようにしましょう。 - 糖質を控えめにする
中性脂肪が高い場合は、脂質だけではなく糖質の摂り過ぎにも注意しましょう。
② 食習慣に注意しましょう
- 1日3回規則的に食事を摂る
- 早食いや偏食にならないように注意する
- 夕食は就寝の3時間前までに済ませる
- 栄養のバランスを心掛ける
③ アルコールは控えましょう
適度なアルコール摂取は、HDLコレステロールを増加させる効果があります。
しかし、過量摂取は血圧を上昇させ、中性脂肪を増加させるので注意が必要です。
アルコール摂取は適量を守って、週に2日は休肝日を設けるようにしましょう。
※1日の適量:ビールなら 500mL、ワインなら 200 mL、焼酎なら 80~100 mL、日本酒なら 180 mL
脂質異常症予防のための日常生活
① 肥満を解消しましょう
標準体重(BMI 25未満)を目指しましょう
※BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
② 適度な運動を心掛けましょう
ウォーキングなど軽い運動を行いましょう
※目標:20~64歳(男性 9,000歩/day 女性 85,00歩/day)65歳以上(男性 7,000歩/day 女性 6,000歩/day)
③ストレスを解消しましょう
自分のストレス解消方法を見付けて日常生活に取り入れましょう
④禁煙をしましょう
喫煙はHDLコレステロールを減少させるので禁煙をしましょう
家族性高コレステロール血症について
家族性高コレステロール血症は、著明な高LDLコレステロール血症,アキレス腱肥厚や腱・皮膚黄色腫、若年性冠動脈疾患を3主徴とする常染色体優性遺伝性疾患です。
これらの原因となるのは、LDL受容体経路において重要な役割を果たすLDL受容体、アポB-100(APOB)、PCSK9 などの分子の遺伝子変異です。
家族性高コレステロール血症の治療においては、若年性冠動脈疾患など動脈硬化症の発症および進展の予防のため、早期診断治療が重要です。
食事療法や生活習慣の改善に加えて、肥満や喫煙など動脈硬化の危険因子を避けることも必要ですが、食事療法や生活習慣の改善のみではコントロールが困難な場合が多く、一般的には薬物治療も併せて行われます。
ご家族様の中で上記の症状や既往に当てはまる方がおられる場合は、お早めに医療機関に相談されることをお勧めしています。
まとめ
健診で脂質異常症を指摘された場合は、まず家族性高コレステロール血症を鑑別することが重要です。
家族性高コレステロール血症に当てはまるものがなければ、女性の場合はエストロゲン分泌量の低下などが関連している場合も少なくありませんが、多くの例では食生活や日常生活が主な原因となっています。
脂質異常症治療の目的は、コレステロール値や中性脂肪値を下げることだけではなく、動脈硬化を予防して、将来的な「狭心症」「心筋梗塞」「脳梗塞」などの冠動脈疾患や脳血管疾患を予防することです。
健診結果で脂質異常症を指摘された方は、この機会に身近なところから生活習慣を見直してみられてはいかがでしょうか。