コラム
健康診断で異常を指摘されたとき(2)高血圧
「健康診断で異常を指摘されたとき」第2回は、高血圧について、生活習慣の改善ポイントや減塩を中心とした食事の工夫についてお話をさせていただきます。
高血圧とは
血圧とは、心臓がポンプのように収縮と拡張を繰り返すことにより、全身の血管を通じて血液を各臓器や組織へ循環させる際に、血管に加わる圧力の数値です。
心臓が収縮した際に送り出される血液量と、血管の内腔径や弾性に影響されており、送り出される血液量が多く、血管が細くて硬いほど、血圧は高くなります。
血圧測定時には収縮期血圧と拡張期血圧を測定しており、最高血圧が収縮期血圧、最低血圧が拡張期血圧になります。
高血圧の基準値は、収縮期血圧 135 mmHg 以上、拡張期血圧 85 mmHg 以上 がひとつの目安です。
高血圧の原因
血管内に多量の血液を溜め込むことに繋がるため、塩分の過剰摂取が主な原因のひとつですが、他にも肥満、運動不足、過量のアルコール摂取、喫煙、ストレスや過労などの生活習慣とも密接に関連しています。
背景に内分泌疾患や遺伝的素因が隠れている場合もあります。
また一部の方では、医療機関や健康診断などで測定すると、緊張して血圧がいつもより高値になってしまう白衣高血圧と言われる方もいます。
こういった場合は、高血圧の判定では診察室血圧よりも家庭血圧を優先することが、日本高血圧学会高血圧治療ガイドラインでも推奨されていますので、家庭での血圧も確認していただくことが重要になります。
高血圧の合併症
血圧が高い状態が長く続いていると、血管は徐々に傷み動脈硬化を引き起こします。
また心臓も、より血液の通りにくい動脈硬化を起こした血管内腔に、血液を送るための負担が掛かります。
こうした原因により、高血圧は「脳卒中」「心臓病」「腎臓病」などの重大な病気を引き起こす可能性もあります。
生活習慣の改善
健康診断で高血圧を指摘された場合、日々の生活習慣においては、まず次のような点を改善してみましょう。
- 減塩を心掛けましょう
1日あたりの塩分摂取量は、男性 8 g 未満、女性 7 g 未満、 高血圧や慢性腎臓病の方は 6 g 未満が推奨されています。
日本人の食塩摂取量は減少傾向にはあるものの、平均で1日あたり約 10 g 程度と言われています。高血圧対策において減塩は最も重要な項目のひとつです。
家庭でもできる減塩のコツについては後述しますが、まずは普段摂取している食材や料理に、どれ位の塩分が含まれているかを知ることから始めましょう。 - 野菜や果物を積極的に摂りましょう
野菜や果物に含まれているカリウムは、体内の余分な塩分排泄を促して、減塩効果を高める作用があります。
ただし血糖値が高い方や慢性腎臓病の方は、過剰な摂取に注意しましょう。 - 肉よりも魚を食べましょう
脂質の主な成分である脂肪酸は、肉のアブラ、バターやラードなどの動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸と、魚や植物由来のオイルに多く含まれる不飽和脂肪酸に分けられます。
不飽和脂肪酸のなかでも、魚の脂質を構成する不飽和脂肪酸は、n-3 系多価不飽和脂肪酸(EPA:エイコサペンタエン酸 および DHA:ドコサヘキサエン酸 など)が多く含まれており、血中の中性脂肪を下げたり、血液をサラサラにして動脈硬化を防ぐ働きなどがあります。 - 肥満に注意しましょう
適正体重(BMI 18.5~24.9)を維持して、腹囲も男性 85 cm以下、女性 90 cm以下に保ち、メタボリックシンドロームに注意しましょう。 - 定期的な有酸素運動を行いましょう
定期的な 1 回 30 分以上の有酸素運動を生活に取り入れましょう。
過度な負荷のかかる筋力トレーニングなどは、逆に血圧を上昇させる場合もありますので注意しましょう。 - アルコールは適量までにしましょう
アルコールを摂取する場合は、適量を守りましょう。
1日量として、ビール(アルコール度数 5%)であれば 500 mL 程までが目安になります。 - 禁煙を推進しましょう
喫煙は「脳卒中」や「心臓病」の原因になります。
禁煙に努めるとともに、受動喫煙も同様にリスクとなりますので、家族や職場などの理解も得て、煙草のない環境を推進しましょう。
日常生活に取り入れる減塩のコツ
具体的に日常生活に減塩を取り入れるための工夫として、実践しやすい項目を挙げています。
- 醤油やソースなどの調味料を最初にかけない
醤油やソースには塩分が多く含まれています。
減塩醤油への変更や、代わりにダシや酢、レモンなどで割ったものを使用しましょう。
また食べる前にかけてしまわずに、味を確認してから少しずつ追加する習慣を付けることも有効です。 - 汁物は具沢山にして出汁を濃いめにとる
味噌汁やスープなどの汁物は、野菜や海藻類などの具材を多く使用することで、具沢山で汁を少なく出来ます。
また調味料ではなく出汁を濃いめにとることで、塩分が少なめでも美味しく食べられます。 - 漬物や保存食品を避ける
漬物や魚介類の干物、塩辛やたらこなど、塩分を多く含む食品を確認しましょう。
漬物はご飯のお供にせずに、食事の最後に少量だけ食べるようにして、保存食を買い置きする習慣を減らすことも有効です。 - 麺類のスープを飲まない
ラーメン、うどん、そば、カレーなどの料理には塩分が多く含まれていますが、実はラーメンに含まれる塩分の半分以上はスープに含まれています。
また麺類と一緒に頼まれている、炒飯やかやくご飯などの味付きご飯にも、塩分が多く含まれています。
麺類を食べるときにはスープを飲み干さず、味付きご飯とのセットを注文する習慣も減らしましょう。
まとめ
健診で高血圧を指摘された場合は、まず普段の家庭での血圧を測定することが重要です。
内分泌疾患や遺伝的素因が関与している場合もありますが、多くの例では生活習慣が主な原因となっています。
高血圧治療の目的は、血圧そのものの値を下げることではなく、将来的な「脳卒中」「心臓病」「腎臓病」などの重大な病気を予防することです。
この機会に生活習慣全体を見直して、まずは自分でも実践できる減塩習慣を日常生活に取り入れましょう。
糖尿病や脂質異常症などの併存症のある方は、併せて医療機関に相談しましょう。