コラム
健康診断で異常を指摘されたとき(1)尿酸値
「健康診断で異常を指摘されたとき」第1回は、特に働き盛りの方が異常を指摘されやすい尿酸値について、検査結果の見方や日常生活で気を付けていただくポイント、合併症などについて、お話をさせていただきます。
高尿酸血症とは
高尿酸血症は、血液検査での尿酸値が 7.0 mg/dL を超えるものと定義され、8.0 mg/dL 以上で治療が必要とされています。
治療はまず生活習慣改善などの非薬物療法からお勧めいたしますが、痛風関節炎や痛風結節がある方、また合併症(高血圧症、高脂血症、糖尿病、メタボリックシンドローム、虚血性心疾患、腎機能障害など)のある方は、薬物療法をお勧めする場合もあります。
また初診時に尿酸値が 9.0 mg/dL 以上の方は、痛風発作や合併症を起こす可能性が高いので、薬物療法をお勧めする可能性が高いです。
生活習慣の改善ポイント
非薬物療法である生活習慣改善の具体的な内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- プリン体を多く含む食事(レバーなどの内臓や魚の干物など)を控える
レバーなどの内臓や魚の干物には、尿酸の原料であるプリン体が多く含まれています。プリン体の多い食品を避けることが食事療法の基本となります。 - カロリー摂取を控えて減量を行う
肥満により尿酸の体外への排泄が低下して、また内臓脂肪が多く蓄積された状態では尿酸が多く産生されます。日頃から体重変化のチェックを心掛けましょう。 - アルコールを控える
アルコールは体内で尿酸の原料であるプリン体産生を促進して、またアルコールが代謝される過程で産生される乳酸は、尿酸の体外への排泄を低下させます。特にビールはプリン体が多く含まれているので、飲み過ぎには注意が必要ですが、他のアルコール飲料を飲む際も、アルコール総摂取量にも注意して適正な量を心掛けましょう。 - 尿をアルカリ性に近づける海藻や野菜類を積極的に摂取する
海藻や野菜類は尿をアルカリ性に保つ作用がありますので、尿酸が尿中に溶けて体外へ排泄されやすくなります。 - 適度な有酸素運動を取り入れる
適度な有酸素運動を取り入れることも、尿酸値を下げる効果があります。しかし負荷の強過ぎる運動や筋力トレーニングなどは、急激なエネルギー消費により乳酸が産生され、逆に尿酸値を上昇させてしまうことがあるので注意しましょう。 - 充分な水分摂取を行う
水分を充分量摂取することで、尿酸が体外に排泄されやすくなります。飲水量の制限などのない方は、脱水にならないようにこまめな水分摂取を行いましょう。 - ストレスを解消する
ストレスを受けることで、尿酸値が上昇します。ストレスを溜め込み過ぎずに適度に解消しましょう。
痛風以外の合併症
また高尿酸血症の合併症といえば痛風発作のイメージが強いですが、痛風発作以外の合併症も問題となってきます。
ひとつは尿路結石症で、尿が酸性に近づくことにより尿中の尿酸が結晶化して尿路内に結石が生じて、腹部から腰部にかけての強い痛みや血尿を来たすことがあります。また尿路結石症により尿路が閉塞することで、水腎症や尿路感染症を繰り返すこともあります。
もうひとつは慢性腎臓病で、高尿酸血症が持続すると尿酸結晶が腎臓に沈着することにより腎機能障害を来たし、自覚症状がない間に徐々に進行している可能性があります。
まとめ
健康診断で高尿酸血症を指摘された場合は、まず二次性高尿酸血症の鑑別や合併症有無の評価を含めて治療方針の検討が必要ですので、そのまま放置しておかずに医療機関の受診をお勧めいたします。
健康診断結果について不明な点がある場合は、身近な産業医やかかりつけ医に相談できる環境作りを普段から心掛けましょう。